コンテストに出すために、提出要件をまとめたドキュメントを自分で作りました。要件を1つずつ書き出して、対応状況を並べた、ごく普通の管理表です。
そこに誤りが3件ありました。
そして、その資料を信じて判断していたので、間違いに気づいたのは一次情報(公式ルール)を直接読んだときでした。
誤り1: 別のアプリの設計が混入していた
資料にはこう書いてありました。
案A(無料トライアル): 既にプレミアムに3日間のトライアルを設定済み
これを前提に、「審査員は無料でプレミアムを試せる」と整理していました。
設定されていませんでした。
根拠として引かれていたのは、別のアプリ(行列予測アプリ)の課金設計でした。3本を並行で作っていたので、資料を書くときに混ざったのです。
確認方法は2つあって、どちらも数分でした。
# 1. コードを検索する
grep -rniE "トライアル|trial|introductory|無料期間" lib/
# → 0件。ペイウォールにトライアル表示のロジックすら無い
2つ目はPlay Consoleの画面です。定期購入の商品一覧で、「特典」欄が – になっていました。 Playの現行モデルでは、無料トライアルは「特典(offer)」として基本プランに紐づけます。特典が空=トライアル未設定で確定です。月額・年額の両方で確認しました。
「設定済み」と書いてある資料を読む時間で、実物を見れば終わっていました。
誤り2と3: 動画の尺と、スクリーンショットの解像度
同じ資料に、あと2件ありました。
- 動画の尺の記載が、実際の要件と違っていた
- スクリーンショットの解像度が
1179×2556と書かれていた
2つ目は、iPhone 15 Proの解像度です。Google Playの規定は「長辺は短辺の2倍を超えないこと」なので、2556 ÷ 1179 = 2.168 で規定違反。App Storeの要件と取り違えたまま、指示書に残っていました。
3件のうち2件は、他のプラットフォーム・他のアプリのものが混ざった誤りです。 複数のプロジェクトを並行で回していると、この種の混入が起きます。
そして本命: 誰も日付を見ていなかった
いちばん重かったのはこれです。
審査員に配るプロモコードは、既に発行済みでした。数量2,000、有効期限は2026年9月30日まで。「準備済み」として管理表のチェックが埋まっていました。
公式ルールを直接読みに行って、こう書いてありました。
Judging Period:
Thursday, October 1, 2026 – Tuesday, October 13, 2026
審査期間は10/1から。コードの終了日は9/30。重なる日が1日もありません。
コードは存在していて、数量も足りていて、正しく公開されていて、そして絶対に使えませんでした。
ついでに分かった、もっと重要なこと
同じ公式ルールを読んでいて、もう2つ発見がありました。
1つ目。要件の原文はこうです。
the app must either offer a free trial or the Entrant must include a promo code for judges to unlock the in-app purchase and test all premium features
「トライアルまたはプロモコード」。どちらか片方でよい。自作の資料では、両方を用意する前提の書き方になっていました。
2つ目。これが効きました。
Judges are not required to test the Project and may choose to judge based solely on the text description, images, and video provided in the Submission.
審査員は、アプリを触らない選択もできます。 説明文・画像・動画だけで判断してもよい、と明記されている。
アクセス手段の提供は必須要件なので用意はします。ただし、優先順位が変わりました。 「審査員が試せるように」課金バグを直すのではなく、「本番公開して実ユーザーに課金させる以上、直すのは当然」という位置づけに変える。そしてデモ動画と説明文の完成度に時間を割く。
要件を満たすことと、評価されることは別の作業でした。
なぜ気づけなかったか
理由ははっきりしています。資料が、実物と同じ見た目をしていたからです。
管理表には要件が並び、対応状況の欄が埋まり、根拠へのリンクも張ってある。よくできた資料ほど、実物を見に行く動機が消えます。 「調べた結果がここにある」という前提で読むので、調べ直す発想が出てこない。
しかも、この資料を書いたのは自分たちです。外部の情報なら疑うのに、自分で作った要約は疑いませんでした。
決めたこと
要件の判断は、必ず一次情報に当たる。 社内資料は「どこを見るか」の索引としてだけ使う。
具体的には、資料の各行に出典URLと確認日を書くようにしました。
- 動画は2分以内 (出典: https://... / 確認日 2026-08-15)
確認日が古い行は、その行を根拠に判断してはいけないという合図になります。
そして、「済み」のチェックには日付を含める。 「プロモコード発行済み」ではなく「プロモコード発行済み(有効期間 8/17〜2027/1/31)」。期間を書く欄があれば、審査期間と突き合わせる動機が生まれます。
教訓
要約は、要約された時点の理解でしか正しくありません。
自分の資料が間違っていたことより怖かったのは、それが正しいかを確かめる仕組みが無かったことです。3件の誤りは、どれも数分で検証できるものでした。検証していなかったのは、検証する必要があると誰も思わなかったからです。
いま自分の管理表には、「確認日」の列があります。
同じく「確認していれば数分で終わった」系の話として、審査員がアプリを開けなかった件と規約ページが全部404になっていた件を書いています。ストア公開でつまずく箇所は全部まとめてあります。