アプリの購入フローをデモ動画に入れようとして、実機で画面録画をしました。
課金のシートを出すところで、Googleの**「アカウントを選択」ダイアログ**が表示されます。そこに並んでいたのは、自分の本名とアドレス、それから運営用に分けている3つのアカウントでした。
吉田圭一郎 0512yoshikei@gmail.com
narabuappinfo1@gmail.com
kirokuappinfo1@gmail.com
nemuruappinfo@gmail.com
4件、全部フルで映っています。
なぜ気づきにくいのか
撮影中は、アプリの画面を見ています。「ペイウォールが表示された」「プランの比較が出た」「購入シートに進んだ」——確認しているのは自分が作ったUIです。
写り込むのは、自分が作っていないUIです。OSのダイアログ、通知、キーボードの変換候補、ステータスバー。撮影の主眼から外れているので、目が滑ります。
しかもこのダイアログは、購入フローで必ず出ます。 事故ではなく、仕様どおりの表示です。
黒塗りの手順
該当する4本の生素材に、ffmpegで矩形を乗せました。
ffmpeg -i scene5_purchase_raw.mp4 \
-vf "drawbox=x=40:y=595:w=640:h=500:color=black:t=fill" \
-c:a copy out.mp4
720x1600 の素材で、アカウント一覧の領域が x=40, y=595, w=640, h=500 でした。
ダイアログのタイトルやロゴ、フッターの同意文言はそのまま残しています。 そこには個人情報が含まれないうえ、全部塗ると「何かを隠した動画」になって、かえって不自然だからです。隠すべきものだけを、過不足なく隠す。
処理したファイルで元ファイルを上書きしました。黒塗り前の素材を手元に残さないためです。残しておくと、次に素材を漁ったときに、うっかり元のほうを使います。
取り返せなかった部分
ここが本題です。
この4本のうち2本は、黒塗りをする前に、既に共有していました。 「素材を確認したい」という要望に応えて、そのまま送っていたからです。
チャットやメールで一度送ったファイルは、遡って修正できません。 こちらの手元をいくらきれいにしても、送った先には黒塗り前のファイルが残ります。
できたのは申し送りだけです。「他所へ転送・共有するときは、送信済みの旧ファイルではなく、黒塗り後の最新ファイルを使ってください」。
情報が漏れる経路は、公開だけではありません。 確認のための共有が、いちばん警戒されない経路でした。
ついでに分かった、技術的な制約
この撮影でもう1つ収穫がありました。
USBデバッグ経由でサイドロードしたビルドでは、Google Playの本物の購入確認シートに到達できません。 3回試して、いずれもアカウント選択のダイアログで止まりました。
本物の購入シートを撮りたければ、内部テストトラックなどを経由した正規のインストールが必要です。
結果として、デモ動画のそのシーンは「ペイウォール → プラン比較 → アカウント選択(黒塗り済み)」までで構成しました。撮れないものを撮ろうとして時間を溶かす前に、経路の制約を確認するべきでした。
決めたこと
撮影のチェックリストに3行足しました。
- 撮影前に、アカウントの表示名を確認する(実名が出るなら変えておく)
- 撮影後、自分が作っていないUIだけを見る通し確認を1回やる
- 共有する前に黒塗りする。 素材段階の共有でも例外にしない
3つ目がいちばん重要です。「あとで公開版を作るときに直す」は、公開前にもう一度共有する機会があるという前提に立っていて、その前提は簡単に崩れます。
同じ撮影で踏んだ他の地雷(テスト広告、IMEの誤変換、途中で解像度が変わる素材)はffmpegだけで30秒動画を作った話に、実機を2つのセッションで奪い合った話はこちらに書いています。